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住民の生存権を守るために - 生活保護の研修に参加して - 市会議員 かじわら秀明

8月20日と21日、横浜市健康福祉総合センターで開催された「第2回生活保護問題議員研修会」(主催・生活保護問題対策全国会議と、全国公的扶助研究会)に参加しましたので、報告します。

1日目の全体会は、最初に、全国会議事務局長の小久保哲郎弁護士が「生活保護申請援助の基礎知識」と題して報告しました。生活保護法の基本についての説明の後、法が守られていない実態として、水際作戦の事例を、ICレコーダーによる録音を交えて紹介。文字通り現場のリアルな報告でした。生活保護制度に期限を設けているアメリカでの悲劇や、弁護士会が提案している制度改善案なども紹介しました。

後半は、反貧困ネットワークの活動家で内閣府参与の湯浅誠氏が「貧困との闘い‐地方政治に何が求められているか」との題目で講演しました。最近の生活保護バッシングと公務員バッシングは相通ずるものがある、との話から切り出し、百歳高齢者行方不明問題にふれ、家族の貧困問題を可視化していく必要があると話します。これまでの経済対策は、国の傘によって企業が守られ、企業の傘によって正社員と下請けが守られ、正社員の傘によって家族が守られてきたが、それぞれの傘がしぼみ、雨に濡れる人が増えている。3つの傘論で話を進めます。湯浅氏は、企業を守る対策だけではなく、直接個人を守る対策として、厚労省内で検討中の「パーソナル・サポート・サービス(個別支援)」について説明し、各自治体で取り組んでほしいと述べました。

2日目の午前の全体会は、国立社会保障・人口問題研究所の阿部彩氏による「子どもの貧困・高齢者の貧困」との講演です。一昨年出版の岩波新書「子どもの貧困」で有名な講師ですが、この日は、高齢者の貧困にも多くの言及がありました。最も印象に残ったのは、「日本人の貧相な貧困感」の指摘です。「現代社会において、全ての子どもに絶対に与えられるべきものは何か」との調査(児童必需品調査、08年)で、「希望する全ての子どもが短大・大学に行けるべきと思う」が、わずか43%、「医者に行く」86%、「絵本や子ども用の本」51%、「クリスマスプレゼント」26%、「自転車」21%です。イギリスの同様の調査では、「自分の本」89%、「自転車」56%、「1週間以上の旅行」71%などです。阿部氏は、厳しい立場に置かれている人(弱者)ほど寛容さが低いと指摘します。(子どもにとっての必需品は、岩波新書の同氏の書でも詳しく論じられている)。阿部氏自身は政策立案が仕事ではないが、紹介された基礎データを元にすれば、対策はおのずと明らかです。格差と貧困を低減するために、日本共産党が明らかにしている政策が当然重視されなければならない、との感想を新たにしました。

午後は3つの分科会に分かれ、私は「生活保護手帳実施要領を学ぶ」に参加しました。「実施要領」とは、具体的な生活保護の運用を現場でどのように行うのか、政府の基準・目安を細かく定めた、いわば事例集です。生活保護の運用は自治体によって違うとの誤解が一部にありますが、厚労省が定めた「実施要領」によって、どの自治体でも同じ基準で運用されています。講義は、首都圏と関西圏で、生活保護のケースワーカーをしてきた4人の自治体職員によるもの。現場体験をまじえ、普段の役所や議会では決して聞くことのできない話でした。それゆえ、参加者からの質問も多く、医療扶助のみを受けること、生活福祉資金、境界層該当、代理納付など、20件以上出され、時間が足りなくなるほどでした。

研修会の締めは、全国会議代表幹事の尾藤廣喜弁護士です。各地の議員がなすべきことは何か、と氏が問いかけたことを記し、私の報告とします。@市民からの一つひとつの相談を大切にしてほしい。A法テラスや弁護士をもっと活用してほしい。尻を叩かなければ法律家はよくならない。B裁判などを闘い、現場の矛盾を制度改革へつなげてほしい。C高齢者の貧困が深刻だ。あの人の問題ではなく私たちの問題。生活保護は保護を受けている人だけの問題ではなく、雇用・税・年金の各種水準を決めるものでもある。私たちの問題として力を合わせよう。(記・8月30日)