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企業利益獲得のための復興か、それとも人間の暮らしの復興か - 社会保障学校が開かれる(9月3日)

講演する渡辺治氏(第一講座)
講演する渡辺治氏(第一講座)
3日に浦和で行なわれた第19回埼玉社会保障学校に参加しました。第1講座の渡辺治氏の講演に続き、第2講座の渡辺繁博氏(埼玉自治体問題研究所事務局長)の講演「地域主権改革と福祉防災のまちづくり」を聞きました。渡辺繁博氏は、県内自治体で37年間にわたり公務労働に携わった方です。

東日本大震災から各自治体がどう復興を進めようとしているか、宮城県と、岩手・福島両県で大きな違いがあると指摘。宮城県の復興会議には県内からの参加がなく、会議はすべて東京で行なっていること、仮設住宅建設は大手プレハブメーカーに丸投げで、地元の雇用にはつながらず、建設そのものも遅れる矛盾が生じていること。岩手県の住田町などで、地元の木材・人材・技術を使って、住民の声を聞いて復興を進めている自治体との違いを示しました。

宮城県の進めかたは、政府の復興論と共通しています。政府の復興構想会議提言は「来るべき時代をリードする経済社会の可能性を追求するものでなければならない」として、農林水産業の集約化、特区制度による民間資本の呼び込み、消費税増税による財源確保などをかかげ、それらは、経団連や経済同友会の復興論の引き写しだと指摘します。特に、震災から1ヶ月もたたずに出された、経済同友会の第二次アピール(4月6日)は、東北の復興は「道州制の先行モデル」をめざすべきで、「規制緩和、特区制度、投資減税、各種企業誘致」などを活用すべきとし、そこには、住民の怒りや悲しみに寄り添う視点が全くない、自分たちがいかに儲けるかの提言だと、怒りをもって告発しました。

ついで渡辺氏は、民主党がかかげる地域主権改革(ことばを少し変えて民・自・公の合意で4月に法が成立)と対決し、福祉のまちをいかにつくるかについて言及します。国民生活の最低基準を自治体条例で規定できるようにしたことで、今後、児童福祉法・介護保険法・障害者自立支援法・公営住宅法・道路法に関わる条例改定が出されることがあるとし、それへの地域運動を呼びかけました。実際厚生労働省は、保育園の居室面積基準を12年4月から3年間、引き下げることができるとする方針を決め、都市部の35市区が対象、県内は、さいたま市と川口市としました(赤旗7月16日付)。

児童福祉法にかかわって、保育園の問題は、しんぶん赤旗が警鐘を鳴らす記事をいま連載しています。基準緩和の条例化に加えて政府は、保育の市場化をめざす「子ども・新子育てシステム」を13年度実施をめざし準備を進めています。児童福祉などへの国の補助を減らすため、地域主権改革なるものを進め、国と自治体の責任分野を減らし、民間会社の市場を広げ、サービスを受けるのは金次第になることがよくわかる講演でした。

親の経済状況によって受けられる保育に格差があってはなりません。誰のための大震災からの復興か、誰のための地域主権改革か、改めて問題を整理し、今後の議会活動にも生かしてまいります。