安心の介護保険制度にするために - 2012年制度改定を学ぶ(5月20日)
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講演する原島氏 |
20日、県社会保障推進協議会の講演「介護保険実践講座と交流のつどい」(浦和)に参加しました。医療生協さいたま・ふじみ野ケアセンターでケアマネジャーをつとめる原島清氏から、介護保険12年間の実践による、詳細な報告と提案を聞きました。
ヘルパー時間短縮は細切れ介護を増やし、小規模事業者は成り立たなくなる
2000年度に始まった介護保険制度の12年は、小泉内閣以来の社会保障削減の歴史だったと講師は総括。そして、今年12年度の制度「改正」を詳説。訪問介護事業の短時間化・効率化をねらい、生活援助「30分以上60分未満」1回229単位(報酬は1単位10円で計算し、2290円。以下同じ)が、「20分以上45分未満」190単位、「45分以上」235単位になった。身体介護では「30分未満」254単位を、「20分未満」を新設(170単位)、(「20分以上30分未満」は254単位で変わらず)などとし、事業者は、介護を細切れにするほど報酬が上がります。しかし短時間化は、小規模事業者には移動時間など手間がかかり経営が厳しくなります。訪問看護でも「20分未満」と「30分未満」の報酬を上げて、「60分以上90分未満」は下げるなど、同じねらいがあります。
短時間化は施設政策にもあらわれます。医療と介護を必要とする高齢者を「医療・介護複合施設」に入れて、医療と介護を短時間で提供することが推進されます。同時に、看護師に医行為を担わせ(死亡診断など)、介護職に医療行為を担わせる(たん吸引など)方向も打ち出され、これらの複雑な事業を実施できる、一部大手企業の参入も促すことにつながっていきます。実際、小規模多機能型施設を運営する県内の大手法人では、ショートスティが1泊5千円で、気軽に利用できる層は限られるとのことでした。
困っている人をケアマネにつなげる相談活動の強化を
質疑応答では、生活援助時間短縮問題に質問が集中。利用者にとって、これまでと同じ時間、サービスを受けようとすれば、報酬が高くなるため利用料が増えます。結局、利用者の負担増か時間短縮、ヘルパーの労働強化(従来60分でやっていたことを45分でする)を求めるかの選択にならざるを得ないと講師は説明しました。
最後に講師は、これからの私たちの課題を提起。悪政に対し理論で反対するだけではだめ。市民(要介護者と家族)と介護労働者の困っている実態を突きつけないと、厚生労働省の官僚は動かない。民医連の「国保実態調査」に学び、相談活動を強めること、とりわけ戦前生まれの高齢者は他人に相談するのをためらう、そうした人をケアマネジャーにつなげる活動が大事。私たちは署名・宣伝活動は得意だが、ひとり一人に寄り添う相談活動が弱いと述べ、その強化を呼びかけました。そして、介護保険制度の改善方向として、65歳以上保険料の無料化、利用料1割の無料化、保険の費用給付から現物給付への転換など、7点を指摘しました。
会の最後に主催者から、介護労働者でつくる「埼玉ユニオンあじさいの会」への加盟の呼びかけ、6月10日の「介護労働改善の話し合い」(10時、埼労連事務所、電話、838‐0771)の案内がありました。
介護制度の再生を
日本共産党の「提言」は、消費税に頼らず当面は12兆円以上の財源を確保し、9兆円を社会保障再生にあてるとしています。特養待機者解消、利用料引き下げ、保険料減免など、介護保険に9兆円のうち1・5兆円をあてます。富裕層と大企業に応分の負担を求め、介護制度再生の切実さを改めて実感する研修会となりました。
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