梶原秀明前市議の過去ページ
『資本論』で斬る! アベノミクス(5月11日)
都内でおこなわれた標題の講演を聴きにいきました。講師は首都大学東京を今年3月で退官され、現在同大名誉教授の宮川彰氏です。東京学習会議の6月からの講座「『資本論』はいかにして生まれたか - 草稿から「資本論」全3巻へ -」の開講を前にしてのガイダンス講座でした。
講師は、資本論草稿を読むおもしろさについて、完成された『資本論』ではなく、そこに至るマルクスの格闘や、思考のあれこれをたどることができ、完成版『資本論』に盛り込まれていない考察が草稿には含まれている、ことをあげました。その例として、所有権(領有権)をあげ、いくつかある草稿の中で、時代ごとにどのような表現をしているのかを示しました。所有とは簡単に言えば、「自らの労働で生み出したものを自らのものにする」と言うことだと思いますが、それを現代に照らし合わせ、大企業に溜め込まれた260兆円もの内部留保が、本来は、誰に所有権があるものなのか、についても『資本論』の立場から言及されました。
後半は、アベノミクスについてのお話。資本論の立場から斬りたかったのだが、いまのアベノミクス論の中身があまりにスカスカで、あまりに浅はかで、斬りつける対象に値しないと、面白く論評しながら議論を進めました。物価が金融緩和のみによって決まるかのような単純化した議論で国民を躍らせていること、たきつけ火をつけ経済がとにかく動き出すことを狙っている(これは、株高で一部成功していると言える)こと、そして、円安なのに輸出が減っている統計データなどを示し、真の不況打開策は、消費の回復とともに、均衡ある再生産が必要と主張します。これまでの日本経済の道は、公共事業中心の第一の道(ケインズ主義)、行き過ぎた市場原理主義にもとづく供給サイド偏重の第二の道(新自由主義)であり、これらの失敗を批判するには、資本論の「再生産論」が理論基準を提供していると述べました。民主党が試みた第三の道、需要や雇用創出をきっかけとした経済成長政策は、生活優先か企業収益優先かで、堂々巡りにおちいり、グローバル大資本の戦略(財官界戦略)のくびきに取り込まれてしまったのが結末だったとの指摘は、なるほどと思いました。