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介護保険の問題点と改善の展望を学ぶ(4月16日)

講演する日下部氏
講演する日下部氏
16日、浦和のときわ会館で埼玉自治体問題研究所主催の地方自治フォーラムがありました。そのなかでの『介護保険「改革」の行方と自治体の課題』について報告します。講演は、堺市の介護保険部門に16年勤めた(一昨年退職)日下部雅喜(くさかべまさき)氏です。

各自治体で新総合事業が始まったばかりなのに、国会では次の介護保険の改悪が強行採決(衆院厚労委)されるなど、今ややこしい時期だと述べつつ、2年間の猶予期間を経て4月に全ての自治体ではじまった(1)新総合事業(介護予防・日常生活支援総合事業)と、(2)次なる改悪の問題点と市民運動の展望について語りました。

(1)では、新総合事業には、a従来相当の専門的サービス、b緩和基準サービスA型、c住民主体サービスB型(bとcが多様なサービス)、d短期集中サービスC型があるが、aをbとcに置き換えていくのではなく、aを土台にb・cを乗せることが私たちの対案だと述べ、大変参考になりました。bをホームヘルプの代替にする動きがあるが、専門的サービスのホームヘルプには130時間の初任者研修が必要だが、bはわずか20時間程度の研修で実施可能。ホームヘルプの専門職でさえ賃金が安く人が足りないのに、短時間の研修で報酬は2割程度も低い無資格者を集めようという、政府のもくろみは無責任だと断罪しました。

(2)では、2018年度に介護報酬の改定が予定され、各自治体では次期(第7期)介護保健事業計画を作成する忙しい時期だと解説。利用者負担が一部2割となったが、これを来年8月には一部3割にもすること。所得基準は政令で定めるため、中所得者層へ対象が広げられる危険性が高いとも指摘しました。さらに、蕨市も県のモデル事業で地域ケア会議がおこなわれますが、「先進」と言われる和光市と大分県のケア会議の資料を紹介。ケアマネジャーの介護プランが「おせわ型」と批判・非難され、介護卒業を促す「自立支援型プラン」へ修正させられる事例などを示し、まるでケアマネジャーが被告席に座らされている様だと指摘。困っている高齢者に介護サービスを使わせないことがケアマネジャーの能力だと、思想教育されている実態を厳しく告発しました。最後に講師は今後の保険料見通しと介護保険財政に言及。全自治体の介護給付費総額は9・6兆円。そのうち国は2・4兆円しか出さず国家予算の2・5%にとどまる。防衛費や贅沢なオリンピック施設やリニア新幹線より、社会保障の充実を、と訴えました。

私は、3月議会で介護保険特別会計予算の質疑をおこないましたが、その際、従来通りの専門的サービスを提供する努力を求めました。担当部長は「現在、従来のサービスと同等の事業のみとしているので、専門職員によるサービスを提供している」と答えています。しかし国・県の指導や財政事情から、低コスト・低品質のサービス提供が専門サービスの代替になる心配もあり、ひきつづき注視していくべきと講演を聞き改めて思いました。