政策と見解
外国人差別問題と多文化共生を考える《日本共産党市議団の見解》
外国人差別問題と多文化共生を考える①
事実に基づいて差別や偏見のない地域づくりを
参院選で「日本人ファースト」との言葉が広がり、SNSでは「外国人が増えて治安が悪化」「外国人ばかり優遇され日本人の暮らしは大変」などの発信が目目につくようになっています。また、蕨駅前でも外国人に関して差別的な宣伝を繰り返しているグループがいます。市民からは「不安を感じた」「殺伐とした雰囲気に怖くなった」「何が起こっているのか」などの声が寄せられています。
事実を冷静に
こんなに暮らしが厳しい中で、「外国人は優遇されている」「大変なのは外国人のせい」と聞いて穏やかではいられないという方もいるかもしれません。しかし、外国人は本当に優遇されているのでしょうか。まずは事実を冷静に見てみましょう。この問題では、参議院選挙を前後してテレビや新聞などの事実検証「ファクトチェック」が行われ、国会でも議論されました。その中で示されたのは、2005年以降の外国人検挙件数は減少し警察では外国人の増加で治安が悪化したとの認識はない、生活保護でも留学生への補助でも外国人が優遇されている事実はない…など。インターネットなどで語られていることは事実とは言えないということでした。
蕨市の状況を見ると
9月議会でも、日本共産党の一般質問への答弁で以下の内容が示されました。
〇国民健康保険 外国人の被保険者数は国保加入者の25%程度ですが、総医療費に占める外国人医療費の割合は6・8%程度。国保税を納めていても使わない外国人が多いといえます。
〇生活保護 全人口における外国人割合は13・5%程度ですが、生活保護世帯全体での割合は3・5%。対象となる外国人は永住者やその配偶者、日本人の配偶者などの在留資格のある方であり、日本人と同じ保護基準で審査されます。
〇治安・犯罪発生の状況 市内の外国人人口は長期にわたって増加している一方で、蕨市の犯罪発生率は大幅に減少。ピーク時約5分の1となっています。そもそも、犯罪やルール違反への対応に日本人も外国人も違いはありません。外国人の犯罪ばかりを問題視するのではなく、地域全体での防犯対策や安全安心のまちづくりが大切です。
市民の不安をあおるヘイトスピーチは許されない
ヘイトスピーチ解消法が制定され、法務省は「特定の国の出身者であること又はその子孫であることのみを理由に、日本社会から追い出そうとしたり危害を加えようとしたりするなどの一方的な内容の言動」をヘイトスピーチとして、その解消を目指すとしています。しかし、実際には事実に基づかない言動により外国人への差別や偏見が助長され、人権が侵害されています。さらに、政府の姿勢や一部の政治家の言動がそうした状況を加速させている問題は深刻です。日本共産党蕨市議団は、事実に基づく議論とヘイトスピーチの解消を目指すとともに、蕨市にも「ヘイトスピーチ禁止条例」の制定を検討するよう求めています。
( ②に続く )
外国人差別問題と多文化共生を考える②
安心して暮らせる共生社会をめざして
今日、国では、少子高齢化に伴う労働力不足を補うために外国人労働者を積極的に受入れる政策を続けています。こうした中で、便性が高く、都内と比べて地価や家賃などが比較的に安い蕨市を含む埼玉県南部などに外国人が多く居住。この地域の自治体では、外国人が増加する中での市政やコミュニティの在り方、具体的な対応などが課題となってきました。
多文化共生の取り組み
蕨市では2022~2026年度の5年間を計画期間とする蕨市多文化共生指針を策定しました。川口市、戸田市でも同趣旨の指針・計画に基づく取り組みが行われています。蕨市の指針は「互いに認め合いともに心豊かに暮らす笑顔あふれるまち蕨」を基本目標に、①学びとコミュニケーションでつなぐまちづくり、②誰もが暮らしやすい環境づくり、③多様性を生かした地域づくり、④地域活性化とグローバル化をはぐくむ人づくりの4つの基本目標の下に施策を具体化。これまでに83.8%の67項目について実施・着手しています。①では、相談窓口の整備、外国人生活ガイドブックの配布や生活オリエンテーション実施など。②では、日本語特別支援教室の整備など教育支援、保育園や学童保育での支援、防災無線の多言語によるSNS発信など、③では、「みんなの広場」の開催や啓発誌の発行などの理解促進、町会の加入や活動参加の促進など、④では、キーパーソンの発掘・育成や国際青少年キャンプなどが主な例です。
計画期間はあと1年数か月。9月議会では、この間に残る事業の具体化推進を行うこと、現状を踏まえた今後の課題について検討を進め時期の取り組みにつなぐことを求めました。
相互理解と交流、事実を踏まえ対応で安心のまちを
「生活習慣が異なる住民が多くなるのは心配」「ゴミ出しルールや生活上のマナーなどが守られるのか」「外国人が多数集まっているのを見ると不安」などの声も寄せられます。そうした思いがあることを踏まえた対応としても、互いの理解や交流を図ることが大切です。同時に、外国人の人たちにも地域コミュニティを担う一員であることを認識してもらい、地域活動への参加や日常生活に生かしてもらうことが重要だと考えます。町会などが続けてきた努力を、蕨市としても引き続き応援し、広げることを要望します。
安全安心や防犯の取り組みでも、外国人かどうかに限らず、市民の不安をなくす取り組みが必要なことは言うまでもありません。防犯灯の増設や町中防犯カメラの整備、青色回転灯を装備した車両でのパトロールなどが行われてきましたが、引き続き必要な対応についての検討も必要です。
一方で、ネットなどでは実情とは異なるような書き込みも目にします。こうしたことに対しては、事実に即した情報を発信していくこと、蕨市としての取り組みも大切です。
(③に続く)
外国人差別問題と多文化共生を考える③
魅力ある人権尊重の街づくりのために
多文化共生指針策定時のアンケートで「外国人が地域に増えることで良いと考えること」の問いに、外国のことに関心を持つようになる(30・3%)、外国の言葉や文化を知る機会が増える(29・0%)、消費者や納税者が増えて地域経済の発展につながる(26・9%)、地域内の多様性が広がる(22・9%)などの回答がありました。こうした期待に応え、多文化共生を蕨市の魅力につなぐことが大切だと考えます。
多様性を生かし、安心で魅力ある地域を!
偏見や差別意識をあおっても、分断や対立が深まるばかりで、希望ある未来が待っているとは思えません。この地域に暮らす市民の目線で、国籍にかかわらずに尊重しあい、コミュニティの一員として互いに協力できる環境を整備してこそ、魅力ある地域社会につながるのではないでしょうか。日本共産党市議団は、そうした視点で多文化共生社会の実現を提案し、議会でも議論を重ねてきました。地域の皆さんの率直な思いなども、引き続きお寄せください。
全国的な課題としても
①生活が苦しい原因は?
第1回の記事でも触れましたが、生活の苦しさは、国の悪政による低賃金や物価高騰、社会保障の改悪などが原因で、外国人にお金がかかるためではありません。消費税の増税や社会保障の改悪、給料が上がらない国にしてきた政府・与党の責任など、政治の問題であることは当然です。不安や不満の矛先を外国人に向ける議論は、問題の本質を覆い隠してしまうことにもつながります。政治の責任をあいまいにすることなく、暮らしを応援する政治に切り替える国民的な運動こそ必要です。
②差別のない社会を!
埼玉弁護士会では8月に、クルド人に対するヘイトスピーチに断固抗議し、誹謗中傷の根絶を求める会長声明を発表。学校でいじめを受けたり、無断で写真や動画を撮影されるなど、日常生活が奪われ、脅かされていることなどをあげ、「ヘイトスピーチを根絶して、人種、民族を理由とする差別を許さない社会を作っていく」取り組みを呼びかけました。地域社会の在り方とともに、子どもたちが育っていく環境を考えても重大な問題です。
参議院選挙では、外国人への不信と敵意をあおる言説が広がり、その後も一部政党による「外国人の総量規制」「帰化取り消し制度」などの議論が社会に差別的な空気をひろげています。さらに、法務局の「不法滞在者ゼロプラン」による強制送還、入管行政や難民政策の問題、技能実習制度など外国人労働者の現状についての問題も指摘されています。こうした全国的な問題も含め、差別のない社会を目指す広範な取り組みが必要です。
日本共産党市議会議員団としても幅広い市民の皆さんと力を合わせて取り組んでいきます。
(了)