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教育まちづくり委員会視察報告 - 市会議員 かじわら秀明

くわなメディアライブ前にて
くわなメディアライブ前にて
三重県内のPFI活用事例を視察

11月7日と8日、教育まちづくり常任委員会は、三重県の四日市市と桑名市を視察しました。どちらも、教育委員会主管施設を約10年前にPFI形式で整備したものです。PFI(プライベイト・フィナンシャル・イニシアチブ)は、民間資金を活用して公共施設を整備する手法で関係法律が平成11年9月に施行されています。

1日目は四日市市。老朽化した10行の学校校舎のうち、4校を一括して整備した事例です。総事業費は約68億円、市の財政負担は約63億円で、現在価値に換算すると、従来方式より約18億円(30%)の軽減効果があると事前に評価し、着手したとのこと。落札したのは大成建設株式会社を主体とする特定目的会社です。

4校校舎の総床面積は約3万5千平方メートルで、これほどの規模がなければPFI事業として成り立たないだろうとの説明でした。今後の課題は、23年間の事業が完了した後は特定会社ではなく市が管理しなければならないこと。PFI導入のための評価に膨大な事務作業が伴うこと、児童数の変動に対応しにくいこと、などが挙げられていました。

2日目は同県桑名市の「くわなメディアライブ」を視察しました。これは、中央図書館と保健センターなど、総床面積8250平方メートルをPFI方式で整備したもの。鹿島建設株式会社を主体とする特定目的会社が、施設整備とともに図書館(床面積約3100平方メートル)の運営も行なっています。

市の財政負担軽減額は約21・5億円(約22%)との見積もり。数値に表せない定性的効果として、年間開館日数が300日以上(旧図書館は270日)、開館時間は午前9時から午後9時(旧は午後5時まで)、閉架図書を自動で取り出せる倉庫システムにより、ICチップ貼付の蔵書31万冊の扱いが容易など、市民の利便性向上も図られています。ただし館内で働く人は若い人が多く、事業者は、サービスの維持のため人件費を抑えているようにも感じました。

どちらの事例もサービス水準の確保を監視するために月1回のモニタリングを法に基づき行っています。しかしPFI契約は請負契約ではないため、設計書の検査や建築中の監督等は基本的にできず、瑕疵があっても事前に見つけられないという、構造的な欠陥があることもわかりました。それはPFI法で「民間事業者に対する公共の関与を最小限にする」としていることからも明らかです。両事例とも財政効果を金額で表していますが、PFIの失敗事例では効果を過大評価したことや、営利追求の株式会社の運営で、市民サービスが維持できない破綻例もあります。

最近はあまり聞かないPFIですが、事業実施後10年程度を経過した2事例をみることができ、様々な面で参考になりました。