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PFIなど自治体の民間化の実態を学ぶ - 自治体政策セミナー(その2) - 市議会議員 かじわら秀明

講演する尾林弁護士
講演する尾林弁護士
自治体政策セミナー後半、自治体民間化について報告します。

テーマは、「自治体民間化の現況と課題」。尾林弁護士(八王子合同法律事務所)が講演しました。ここ10数年の「民間化」の状況を振り返り、指定管理者制度、PFI、地方独立行政法人、特別区域(特区)、自治体職場への労働者派遣、市場化テストの各制度、さらに、分野別の「民間化」の事例として、保育、図書館、介護、水道、体育施設、学校給食、病院、戸籍・国保事務などの問題点に言及しました。

指定管理者制度については、総務大臣自身が「官製ワーキングプァというものを随分生んでしまっている(11年1月5日記者会見)」と述べるなど、住民サービス低下、行政との癒着、雇用問題が広がっていて、これまで8万施設が指定されたが、うち4千5百施設以上で指定取り消しがされているとの統計も示しました(資料は自治体問題研究所の角田英昭氏による)。

「PFI神話の崩壊」という著書を持つ講師は、「民間化」の中でもPFIについて詳述しました。事業者の破産・汚職・撤退などの数々を例示。PFIは、もともと民間の資金と技術・ノウハウの活用が売り出し文句だったのに、PFIが広がらないことへの焦りか、政府が官民共同のPFI推進機構を立ち上げたことを示し、民間の活用のために、官が資金を出すのでは、従来型の公共事業と変わらないと指摘。「アベノミクスをあおるもの。自民党型大型公共事業の再起動であり、大企業応援の逆転の発想」だと、厳しく批判しました。同様の批判が朝日新聞3月25日付の社説(注参照)に載り、「ようやく私の批判に朝日も追いついてきた」と述べました。

水道の分野については、全国で水道設備の老朽化が問題となり、次の施設更新時にPFI化の動きが出てくるだろうと注意を喚起。水道にPFIを導入し民間が管理するとどうなるか。初めは安い料金だが、知識も人材も役所からなくなると、料金や安全のチェックができず、住民が民間水道の言いなりになると指摘しました。

最後に講師は、市民の人権、命や健康にかかわるもの、福祉や教育は絶対に民間化してはいけないと、セミナー参加者の奮起を訴えました。

2日目も参加者から発言。民間化のデパートといわれる足立区政について、ぬかが和子区議(共産党)が報告。戸籍は富士ゼロックス、介護はテンプスタッフ、国保はNTTデータ、会計管理はパソナ、課税はTIS、保育所入所業務はNEC、児童手当支給業務は三井物産グループなど、委託のデパートの告発と、対抗する議会論戦・市民運動が紹介されました。子ども子育て新システムを先取りしていると言われる横浜市からは、保育の実態報告。582の全保育園の2年度分の決算を調査したところ、民間保育園は公立保育園の6割しか人件費を支出していないこと、ある法人ではひと園当たり7千万円の運営費が法人本社に吸い上げられていること、別の法人では1億円以上の運営費が隣の東京の保育園建設に使われている実態、保育士の経験も社会福祉法人では6年強が平均だが、株式会社では1年から1年9ヶ月ほどだと驚きの報告がありました。これらの問題では近々国会で取り上げるため準備しているとのことです。

他に、神戸市・三重県いなべ市・京都市・狭山市、長野県安曇野市、富山市、などから発言がありました。狭山市では、老朽化した保育園を建て替えて、この4月から指定管理者制度による運営になっているとの話でした。

講師は、運動の進め方についても助言。横浜は保育の企業化の最前線だと述べ、市民に分かりやすい批判のし方として、現場の貧しさ(ビルや高架下の保育園)と、吸い上げられた収益が何に使われているのか、そのコントラストを示すことも重要、と述べました。

公共施設を企業の儲けのための市場にする狙いが、政府にあるのは明らかですから、それに対峙して、公共施設は住民自身の施設だと実感できなければならないと、改めて考えさせられるセミナーとなりました。 

注・朝日新聞3月25日付社説より引用:「これまで実施された400件余、総額4兆円強のPFIを政府が分析したところ、4分の3は単なる延べ払いだった。建設費や一定期間の管理費を民間が立て替え、国や自治体が分割返済していく手法だ。『施設の安易な新設につながった』との批判が絶えない。」