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9月市議会・一般質問における市の共催・後援「基準」をめぐる議論について
「思想信条の自由、表現の自由」を尊重する社会を(上)

9月定例市議会で、市民団体が主催した元文部科学事務次官・前川喜平氏を講師とする講演会(8月28日開催)への蕨市と蕨市教育委員会の「後援」決定は不当との立場で、令政クラブ・保谷武議員と日本維新の会・中野たかゆき議員がそれぞれ一般質問を行いました。

両議員の主張は、規定に沿って行われた後援決定に対して、講師がふさわしくない、政治的中立性に反する等の理由で不当と決めつけるもの。さらに、「市民が様々な考え方にふれる機会を設けることは、教養や文化の向上に資するもの」「基準違反する問題がないため、名義後援に支障はないものと判断」「特定の政治団体や利益団体にかかわるものでないことから適切な判断」(以上、総務部長)という答弁に対しては、「外形的判断ではなく良識を持って判断すべき(保谷議員)」「前川喜平氏の思想信条に基づく講演そのもの…(中野議員)」「人物の評価を含めて当然に審査されるべき(中野議員)」等と審査方法や承認の基準の変更を求めてました。

こうした議論には、「見解の違い」を差し引いたとしても看過できない重大な問題があります。「私自身参加していませんので、どのような内容だったのかはわかりません」としながら「実態は左翼勢力の政治集会に他ならない(保谷議員)」と述べるなど、自身の憶測や決めつけを議論の前提にしていること、そして「政治的中立」の名のもとに個人の思想信条といった内心に踏み込んだ判断を行政に求めているという点です。
これらがまかり通るのであれば、内容によらずに一部の人間の判断で都合の悪い人物の活動は後援を行わないという差別的な取り扱いをすることも可能になり、「良識」や「中立」等、曖昧な基準で内心まで調査し判断することにつながりかねません。思想信条の自由、表現の自由、検閲の禁止等の憲法で保障された人権を脅かしかねない問題といえるのではないでしょうか。

次週につづく