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【12月市議会】「核兵器禁止条約」への参加を求める市民からの陳情に賛成討論ー市議会議員やまわき紀子

陳情第6号「日本政府に核兵器禁止条約に参加を求める意見書の提出を求める陳情」に対して日本共産党蕨市議団を代表して賛成の立場から討論を行います
2017年7月に国連会議で採択された核兵器禁止条約が2020年10月25日(未明日本時間)、批准国の50に達し、条約の規定により90日後の来年1月22日に発効することが確定しました。
国連総会で(1946年1月)の第一号決議で、原子兵器の撤廃を提起して以来、初めて、画期的な国際条約となります。

2017年7月7日「核兵器の全面廃絶につながる、核兵器を禁止する法的拘束力のある協定について交渉する国連会議」は、核兵器禁止条約を、国連加盟193カ国の63%にあたる122カ国の賛成(棄権1、反対1)で採択しました。
この条約には、国際社会の英知を結集し、核兵器廃絶に必要な要素が盛り込まれています。
その前文で、核兵器の非人道性を厳しく告発し、国連憲章、国際法、国際人道法にてらして、その違法性を明確にする太い論理がのべられています。国際社会がこうした認識に到達するうえで、「ヒバクシャ」をはじめとする「市民的良心の役割」が強調されていることは、この条約をつくりあげた力が世界の草の根の運動にあることを示すものとして、きわめて重要です。
また条約では、核兵器の法的禁止の内容として、核兵器の「開発、実験、生産、製造、取得、所有、貯蔵」、また「使用、使用の威嚇」、締約国の領土と管轄地域への核兵器の「配置、導入、配備の許可」などが明記されました。核兵器の「使用の威嚇」の禁止が明記されたことは、核兵器による威嚇に依存した安全保障論、核抑止力論を否定したものとして、大きな意義をもちます。これらは、核兵器に「悪の烙印(らくいん)」を押し、それを全面的に違法化するものとなりました。
さらに条約には、核兵器の完全廃絶にむけた枠組みが明記されました。核保有国の条約参加の道として、(1)核兵器を廃棄したうえで条約に参加する道とともに、(2)条約に参加したうえで核兵器を速やかに廃棄する道が、規定されています。
そして条約は、「核兵器の使用または実験によって影響をうけた諸個人」に対する支援を、「差別なく十分に提供する」ことを、核兵器によって被害を与えたことのある締約(ていやく)国(こく)の責任として明記しています。これは、長年にわたって被爆者援護を求めてきた被爆者の切実な願いにこたえる画期的な条項となります。
 
この到達は、核兵器固執勢力、なかでもアメリカ、ロシア、イギリス、フランス、中国(米ロ英仏中)の核保有5大国(たいこく)が、核兵器の近代化を進め、「対立」するアメリカ中国も一致して禁止条約を非難する共同声明を繰り返し発表するなどの敵対・妨害を乗り越え、築かれたものです。
広島・長崎の被爆者をはじめ「核兵器のない世界」を求める政府と市民社会が共同した、壮大なとりくみの歴史的な到達です。
来年に予定される核不拡散条約(NPT)再検討会議において、核兵器禁止条約という新たな国際規範を力に、核保有国に対して、(NPT第6条の「核軍備縮小・撤廃のために誠実に交渉を行う」義務と自らが世界に約束した「核兵器の完全廃絶」(2000年NPT再検討会議)の実行を迫る、国際的な世論と運動を発展させることが、いよいよ重要となってきています。

今年9月21日に公表され、その後各国首脳(しゅのう)に送付された、米国との軍事同盟に参加する20カ国の元首脳、国(こく)防相(ぼうしょう)、外相(がいしょう)経験者の共同書簡(9月21日)では、核兵器が安全保障を強化するという考えは危険で誤りだと強調し、禁止条約が世界の多数派に支持される「希望の光」であるとのべ、条約への参加を呼びかけました。

この間、日本政府が、核兵器禁止条約について繰り返すのは、「立場の異なる国々の橋渡しに努め、核兵器のない世界の実現に向けた国際社会の取組をリード」するということでした。
その実態は、核兵器廃絶を「究極目標」と位置づけ、永遠の将来に先送りにする立場をとり、核保有国がよりどころとする「核抑止力」論を擁護するなど、それを実現する立場にたっているとは言えません。
そもそも核兵器をめぐる国際政治の構図は、核兵器廃絶か、核兵器固執かの対決となっており、その間に、「橋渡し」をすることなどできません。
日本政府が、国連総会に提出した決議では、「核兵器のない世界」をうたいながら、核兵器禁止条約に一切言及していません。核兵器廃絶を「究極目標」として、永遠の将来に先送りし、核戦力の維持・強化をはかる核兵器保有大国の意向にそったものとなっています。
この日本政府提案の決議は、核兵器禁止条約の先頭にたってきた国々から厳しい批判をあびました。他方、アメリカは棄権、中国ロシアは反対しました。「橋渡し」論は、国際的にはすでに破たんしたものというほかありません。

唯一の戦争被爆国・日本の政府は「核兵器のない世界」をめざす取り組みの先頭にたつべきです。来年1月に予定されるNPT(核不拡散条約)再検討会議では、「核兵器のない世界」に向けた前進をつくっていくために、世界の多くの諸政府と市民社会の連帯を大いに強めていく運動の先頭にたつべきです。

こうした中、核兵器禁止条約への参加を求める地方議会の意見書を採択した自治体は494となり500に迫ろうとしています。埼玉県では上尾、桶川、春日部、川口、など14議会で採択されています。世論調査では7割の国民が核兵器禁止条約に参加すべきだと答えています。    

核兵器禁止条約の発効は、被爆の実相を伝え、再び地球上に原子爆弾の惨禍(さんか)を繰り返してはならないと、文字通り命懸けで訴え続けてきた被爆者の皆さんや、核兵器廃絶を願ってきた世界中の多くの人々の思いが、国際的な世論や運動となって広がり、多くの国々を動かした成果です。
広範な市民とともに核兵器廃絶の運動に参加し推進してきた日本共産党蕨市議団としても、心から歓迎するものです。私自身、県内や市内の平和運動にたずさわり、広島、長崎、沖縄と被爆地や戦争の爪痕(つめあと)を訪れ、多くの被爆者の方から体験やお話を聞き、被爆者のみなさんと心をひとつにして運動をつなげてきました。

政府は、こうした国民の思いと核兵器廃絶を目指す世界の動きを正面から受け止め、速やかに核の傘から離脱し、核兵器禁止条約に署名、批准を行うとともに、核兵器廃絶に向けた積極的な役割を果たすべきです。
また、蕨市議会は、1985年9月「平和憲法の精神を守る立場から、非核三原則が厳守されることを強く希望し、世界のあらゆる国の核兵器の速やかな廃絶を願う」とする蕨市平和都市宣言をつくりました。
こうした立場から、国に対して、核兵器禁止条約の署名・批准を求める意見書を提出すべきだと考えます。

以上の見解をのべ賛成討論といたします。