市長は、岡崎春雄、鈴木巌両氏に、視察旅費の半額を請求すべき
違法公金支出返還請求裁判の判決下る
二〇〇四年十一月八日から十一日の二泊三日で行われた市議会総務常任委員会の行政視察の途中、自民党の岡崎春雄議長(当時)と公明党の鈴木巌議員(当時)が二日目の視察市に行かず、近くの競艇場に行って舟券を買っていたという事件に対して、市民から「市長は旅費の半額の返還を求めるべきだ」という裁判が起こされていました。その裁判の判決がさいたま地方裁判所で、五月三十一日に言い渡されました。日本共産党市議団から志村茂団長が傍聴に行きました。
判決内容は原告の訴えを全面的に認めたもので、「両議員(当時)の競艇場訪問は公務といえないので、市長は支給した旅費の半額(二日間の視察の内、一日が私的行動と見なす)を両氏に返還請求しなさい」というものでした(判決文の主要部分を別掲)。
この判決に関して六月一日の市議会本会議で市長は、「市といたしましては、この判決内容を十分精査いたしまして、早急に対応を検討していきたい」と述べただけでした。
市が判決を不服として高等裁判所に控訴できるのは十四日以内(六月十四日まで)で、控訴するには議会の同意が必要です。
日本共産党市議団の志村団長は一日、市民ネット21の新藤会長及び市民連合の一関代表と会談し、市長が控訴の同意を求める議案を提出したときには反対することを申し合わせました。
五日、市長は、控訴しないことを発表しました。岡崎議員及び鈴木巌氏は公式に謝罪し、速やかに旅費の返還をすべきです。
【判決主文】
一、被告は、岡崎春雄及び鈴木巌に対し、それぞれ四万八三九〇円及びこれに対する平成十六年十一月十日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払うよう請求せよ。
二、訴訟費用は被告の負担とする。
【「事実及び理由」の主要部分】
「すなわち、本件経緯は、要約すると、『@本件視察は、前もって平成十六年十月二十二日から二十七日にかけて、日程及び視察先につき総務常任委員会の各委員の総意により決定され、議長の承認を経ていたものであった。Aしかるに、岡崎及び鈴木は、本件視察の第一日目(十一月八日)の筑紫野市における視察終了後、たまたま博多での夕食の席で福岡競艇場のポスターを見たことから同競艇場訪問を思いつき、翌日鳥栖市での行政視察が予定されていたのにもかかわらず、これをキャンセルし、本件競艇場訪問をした(なぜ急遽岡崎らのみ当初予定された鳥栖市の行財政改革・事務改善についての視察をとりやめ、福岡競艇場訪問に変更しなければならなかったのか、その合理的説明は岡崎らからはなされていない。)。 B岡崎及び鈴木は、昼十二時ころから午後四時ころまでの間、最初昼食をとりながら職員からの説明を受けた時間はあったものの、その後数時間は職員らの付添いもなく独自に午後のレースについて舟券を購入するなどのことをしていた。C福岡競艇場訪問後、岡崎において、同競艇場の印象等について十一月九日夕刻佐賀市における夕食の際に岡田委員長に簡単に口頭で報告したこと、蕨市帰庁後、戸田競艇組合事務局の者に戸田でもG1レースをやるべきことや職員の若年化を図るべきこと等を進言したことは窺えるものの、その他の議会関係者らに福岡競艇場訪問について報告した形跡はなく、岡田委員長名義で作成された視察報告書にも岡崎及び鈴木の本件競艇場訪問については何らの記載もされていない。』というものである。
これらの事実を総合すると、当時、岡崎が議長職にあり、両名が一般会計の歳入に関する事項を所掌する総務常任委員会に所属し、鳥栖市の視察をキャンセルして福岡競艇場を訪問することについて前日の夕食の席で岡田総務常任委員長の了承を得たといっても、その旅程変更は余りに唐突であり、客観的には、岡崎及び鈴木において競艇開催のポスターを見て福岡競艇場で競艇が開催されていることを知り、地味な行政視察をする代わりに近くの福岡競艇場に行き、半日競艇に興じたといわれてもやむを得ない(仮に、岡崎らの動機の中に、施設改修をした福岡競艇場を見てみたいということがあったとしても前記判断を左右するものではない。)。
そうすると、本件競艇場訪問は岡崎及び鈴木の私的行動であって公務の範囲とはいえないと判断するのが相当であり、岡崎及び鈴木は本来鳥栖市において行政視察をすることを前提として旅費支給を受けながら、それを行わず私的な福岡競艇場訪問をしたものであるから、福岡競艇場訪問にかかる旅費については、岡崎及び鈴木は不当利得したものとして、蕨市に返還義務を負うというべきである。」「返還すべき不当利得の範囲について検討するに、本件視察において視察に充てられる日として予定されていた日数が二日間であり、そのうち一日につき、岡崎及び鈴木が公務を行わなかったことにかんがみ、岡崎及び鈴木の旅行費用として支出された金額のうち半額(各自四万八三九〇円)が不当利得に該当すると解するのが相当である。」
|