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景観の観点で建物を低くする都市計画を学ぶ - 市会議員 かじわら秀明

私は5月14日、市町村議会議員研修会(京都市、主催・自治体研究社)の、都市計画の集中講義に出席しました。ここではその内容を報告します。

講師は、神戸松蔭女子学院大学教授の中林浩氏で、京都自治体問題研究所の理事長の立場にもあり、都市計画学が専門。2004年の景観法の審議で、衆院委員会で意見陳述をした経験も持ち、講義は、都市景観を中心に展開されました。第1講・都市法制の概要とその限界、第2講・地域破壊に抗するまちづくり運動、第3講・先進的なまちづくりの理念と実践、という構成です。

氏の景観論の中心は、「今まで人々が親しんできた景観がいっきょに変わってしまうことは、不幸であり、社会的損失であり、人権にかかわる問題である。すぐれた景観を享受する権利が必要」というもの。京都において、世界遺産(銀閣寺や平等院鳳凰堂)のまわりや後方に高層マンションが建つなどの事例を挙げ、景観権の侵害を指摘します。観光地だから、景観が特に重要ということにとどまらず、大阪や東京の過密都市でも、「落ちついた日常的な景観」をどう守るのか、景観についての住民・地権者合意をどうつくるのかを(運動をする人は)よく考え、地域での建物の高さはやはり3階か4階までの町にすべき、高さ10mのまちに、30mの建物ができると町の論理が全く覆ってしまう、と強調しました。

「町を壊しているのは高層マンションと自動車交通だ」と述べます。建物を低くするのはまちづくりと景観保持にとって決定的であり、「街路は曲がっていて街区は小さいほうがいい。自動車はゆっくりで人通りは多く」と、アメリカの都市研究家、ジェイン・ジェイコブスの主張も紹介しました。

国民共通の資産である景観を守るためには、やはり都市計画法をよくしなければなりません。氏はその観点として、(1)マンション反対運動など地域の運動から出発して法制度を考える、(2)法の理念を権利にして裁判に役立つものにする、(3)高さ制限が重要、(4)周辺環境との調和の原則をとりいれる、(5)反対が多い場合の建設中止のしくみを入れる、ことを示しました。

いま、塚越4丁目で30mマンションが建設中で、地域住民との摩擦が生じていますが、このことも考えながら講義を聞くこととなりました。また、蕨市で焦点となっている地区計画についての質問もしましたが、講師は蕨市が最小面積の市であることをよく知っていて、「住民の合意ができていけば、箱庭のようなまちが期待できるのでは」との感想を述べました。この講義には全国から37人の地方議員が参加。名古屋市、桑名市、寝屋川市、裾野市、浜田市、所沢市など、各地で都市問題に取り組む議員から発言があり、参考になりました。