わたしたちの制度として生活保護を考える - 議員研修会・2日目 - 市会議員 かじわら秀明
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「生活保護費と地方財政」分科会で講演する武田教授 |
生活保護問題議員研修会の2日め(8月25日)の午前は、分科会「生活保護費と地方財政」に出席しました。基調対談を行った吉永教授が、最近の話題から、扶養と不正受給の問題を解明。金沢大学の武田公子教授が「生活保護と地方財政」と題して講演しました。参考になった主な主張点を紹介します。
◆「親族の扶養は生活保護の要件ではない」。お笑いタレントたたき騒動直後から、日弁連や全国生活と健康を守る会連合会などが主張してきたとおり、成人した兄弟など、親族を扶養するのは生活保護の開始条件ではないことを、法律的にも明らかにしました。扶養義務を強調することは保護申請の新たな「水際作戦」(窓口で追い返すこと)となります。
◆不正受給は件数で1・8%、金額で0・4%以下であり、その半数は、就労の未報告や年金未申告など。福祉事務所の調査体制を強める対策こそ重要で、「不正受給」を口実にした生活保護の適用制限はまちがい。
◆「生活保護受給者の増加が自治体財政を圧迫する」というのはウソである。武田氏の講演は、総務省の資料にもとづき、基準財政需要額の生活保護費分と、生活保護費充当一般財源を比較。2001年度から09年度でいずれも需要額の方が上回っていることを示しました。(政府根拠資料は、地方財政統計年報と地方交付税等関係係数資料)。
生活保護費の4分の3は国の負担、4分の1は市町村の負担とされていますが、地方負担分は地方交付税でまかなわれます。交付税の算定をするのが、基準財政需要額です。蕨市の11年度決算では、市の負担は約6億5千万円、地方交付税は約7億6千万円です(6日の市議会決算質疑答弁)。蕨市の生活保護費は市の財政を圧迫していません。
◆いま大事なことは、受給者の就労支援や自立支援のために、ケースワーカーをふやすこと。
午後の特別講座は「メンタルケアが必要な方への福祉的援助」に出席。横浜市港北区で医療ソーシャルワーカーをされている横山秀昭氏が講演しました。精神病患者の実態と各種福祉制度、アルコール依存症への対処など、日々の事例対応を聞くことができ、蕨市保健センターや地域活動支援センター「糸ぐるま」、保健所の重要な役割を改めて認識しました。ある団体が、インターネット検索会社ヤフーに申し入れ、「死にたい」を検索すると自殺予防対策センターがトップに表示されるようにしたという話は初耳でした。ちなみにグーグル(米企業)は同じ申し入れを拒否したとのことです。
二日間の研修会は、全国から政党・会派を超えて232人の地方議員が参加しました。主催者が政党批判は控えるようにと釘をさすほど、参加者は多彩でしたが、生活保護はまさに自分たちの問題だということは、全参加者の共通認識になったと思います。
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