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社会保障をよくする蕨の会が「社会保障制度改革推進法」の学習会行う

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社会保障をよくする蕨の会は5月25日、中央公民館において、埼玉社会保障推進協議会の船橋初恵事務局次長を講師に招いて、「今後の社会保障はどうなっていくのか?―『社会保障制度改革推進法』の正体。私たちのめざすもの―」と題する学習会を行いました。21名が参加し、日本共産党蕨市議団からは志村茂議員が参加しました。

佐藤一彦会長の挨拶に続いて話をした船橋氏は、最初に「社会保障制度改革推進法」について、「今まで築き上げてきた社会保障制度を解体しようとするもので、憲法改悪を先取りした悪法」だと述べ、法律の条文ごとにたくさんの資料を示して問題点を指摘(講演の内容は別記)し、「構造改革」路線と決別するための当面の課題を説明。7月の参議院選挙が大事になっていると話しました。

講師の話の後、参加者からの質問を受け、意見交換を行いました。最後に勝島宏事務局長が、「憲法違反の『推進法』を廃止し社会保障の拡充を求める請願」署名をたくさん集めましょうと訴え、閉会しました。

【船橋氏の講演の概要】

第一条(目的)では、「安定した財源を確保しつつ受益と負担の均衡がとれた持続可能な社会保障制度の確立を図るため」とあるが、これは、「応能負担の原則」を明記せず、「受益と負担の均衡」という表現にしていることが大きな問題点である。(歴代内閣が進めてきた消費税導入・増税と税のフラット化、法人税減税、雇用破壊、雇用者報酬減、GDPの停滞などについて説明し、)社会保障制度は、基本的人権としての生存権を保障することを目的としたもので、「応能負担の原則」に基づいて財源を調達し、「必要充足の原則」に基づいて給付を行う所得再分配の仕組みである。憲法25条に書かれている「国の責任」に照らしても、「受益と負担の均衡」をはかるものではない。さらに条文では「社会保障制度改革国民会議を設置すること等により、これを総合的かつ集中的に推進する」として、「アベノミクス」を進めていることが問題だ。社会保障制度改革国民会議では、「消費税の引き上げを我慢してもらうには社会保障自体の身を切ることが必要だ」という議論になってきて、社会保障給付の制限・限定化に集中した審議が行われ、医療・介護・年金はすべて「圧縮・制限・限定化」し、保育は市場化が打ち出されている。

第二条(基本的な考え方)では、第二条の一で「家族相互及び国民相互の助け合い」を強調し、国の責任を放棄している。第二条の二で「給付の重点化」「税金や社会保険料を納付する者の立場に立って、負担の増大を抑制しつつ、持続可能な制度を実現する」と記述し、それに沿って個別分野ごとに事実上の削減プログラムを示しているし、「負担の増大を抑制」するために社会保障を抑制する方向で動き出している。第二条の三では、「年金、医療及び介護においては、...国及び地方公共団体の負担は、社会保険料に係る国民の負担の適正化に充てることを基本とする」として、人権原理(公助)に基づく社会保険を連帯原理(共助)にすりかえることを徹底しようとしている。具体化は社会保障制度改革国民会議で行っている。第二条の四で、「社会保障給付に要する費用に係る国及び地方公共団体の負担の主要な財源には、消費税及び地方消費税の収入を充てるものとする」と記述した。現在の「公費負担」をすべて消費税に置き換えれば、消費税率は30%を超える。

第三条(国の責務)では、「国は、前条の基本的な考え方にのっとり、社会保障制度改革に関する施策を総合的に策定し、及び実施する責務を有する」として、重ねて社会保障制度の投げ出しを宣言している。

第五条(公的年金制度)、第六条(医療保険制度)、第七条(介護保険制度)、第八条(少子化対策)には、社会保険における保険主義の徹底を狙う記述がたくさん入っており、払った保険料の範囲内での年金、医療、介護の給付にしようとしている。一部はすでに具体化され、あるいは方針が示されている(2013年10月から3年で年金額2.5%削減。その後も物価や賃金に関わりなく毎年0.9%年金を削る。70歳〜74歳の患者負担を1割から2割に引き上げ。風邪や腹痛などの初期医療に「保険免責制」(全額患者負担)を導入。特養ホームは中重度者に限定。要支援の人の利用料を1割→2割に。公的保育を解体し、市場化・営利化に向けた流れを作っている)

附則第二条(生活保護制度の見直し)で、「生活扶助、医療扶助等の給付水準の適正化、...その他の必要な見直しを早急に行う」として、社会保障や生活保護制度を「人権原理」から「連帯原理」にすり替えている。生活保護バッシングが広がっているが、その背景には、生活保護を受けている人の何倍もの人たちが生活保護基準を下回る所得で生活している(イギリスの捕捉率87%、フランス90%などに比べて日本は低すぎる)。生活保護への攻撃は国民全体への攻撃。国民が力を合わせて、くらし全体を底上げすることが大事。