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人口減少時代になぜ大規模開発か
各地で進む無謀な計画を学ぶ/市議会議員 梶原秀明

自治体学校の2日目(7月23日。1日目の報告は本紙前号に掲載)は、12の分科会が行われ、私は、中山徹教授が講師を務める「大規模開発を考える」に参加しました。「コンクリートから人へ」と民主党政権時代に4・6兆円に減った公共事業予算(国家予算レベル)が、安倍政権で6兆円になっていると、人口減少時代に大型開発が増えている実態を講師は示しました。

具体的に、リニア新幹線をめぐる相模原市の「広域交流拠点計画」を紹介。「相模原駅の利用圏を対象とした計画ではなく、首都圏南西部、さらには海外からの来訪者までを想定した開発計画」だと指摘し、海外・首都圏の需要を取り込むことを想定した、実現性に乏しい計画だと警告しました。長崎新幹線関連では、長崎市で進む「長崎駅周辺まちづくり基本計画」と「交流拠点施設の基本的考え方」で、「国内外の多くの人たちを呼び込む」としていると紹介。相模原市と同様な狙いです。さらに、北陸新幹線の延伸計画関連では、小松市が「小松空港と直結する北陸新幹線小松駅」とし、「世界とつながる北陸ゲートウェイ」と大風呂敷を広げていることを指摘しました。

リニア、長崎、北陸、各新幹線予定駅の約半分で、こうした大規模開発計画が進み、駅間、都市間でお客の奪いあい、外国のお客頼みとなり、無謀な計画だという印象を私は受けました。中山氏は他に、MICE(国際イベントなどを行う大型施設)の過大な計画の実態も詳しく説明しました。

ではどうすればいいかと中山氏は問いかけ、大規模開発は、防災などの例外を除き不要であること、施設は今あるものの長寿命化を基本とし、市街地を縮小するコンパクト化も不要、住民参加で生活圏(ほぼ小学校区)の整備(保育・教育・医療・介護などの充実)を進めることこそ必要と主張しました。

新たな開発を進めようとする自治体の多くは、地域の要望からではなく、人口減少をどう止めるかの展望もなく、国の補助金獲得競争に乗り遅れるなと、大規模開発の長期計画を立てている実態がわかりました。国政を早く転換しないと、莫大な無駄使いが続き日本経済も立ち直らないことを実感しました。

分科会では他に、丸山慎一千葉県議会議員(日本共産党)が、「巨大開発はことごとく赤字」と、千葉ニュータウンや幕張メッセなど、千葉県での大規模開発の実態を詳細な資料とともに報告。京都府、大阪市、柏市、千葉市の研究者や議員からの報告もありました。

蕨市の駅前再開発のあり方の参考になると同時に、隣接市のさいたま市、戸田市、川口市の大規模開発を、批判的に検討する際の参考にもなるものでした。