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自治体学校レポート(2)
地方行政のデジタル化と個人情報保護制度
市議会議員 武下 涼

講演は龍谷大学の本多滝夫教授。「地方行政のデジタル化と個人情報保護制度」と題して「地方自治」をめぐる主要な論点を確認したうえで第32次地方制度調査会答申の柱の一つ「地方行政デジタル化」を学び、その問題点について情報交流をしながら深めました。

本多教授の専門分野は行政法で、自身は「きっかけは、学部生のときに選択したゼミが行政法の演習だったことで、国家権力の濫用に対する統制に関心があり、民主主義の観点から行政法学はそれを可能とする法律と考えたから」と専門分野とのかかわりについて語っています。

講座では、第1講「日本の地方自治の歩みと第32次地方制度調査会答申」、第2講「地方行政のデジタル化と地方自治」、第3講「地方行政のデジタル化と個人情報保護制度」について。政府が作成した資料などを示しながら問題性を指摘し、制度に設けるべき仕組みについて提言しました。

デジタル化の推進のなかで、「政府の関係会議、資料では用語が複雑化しており読み解くことは難しくなってきている。実際、現場で担当となった公務員自身が、理解をしているかどうか、議会・議員においても理解しているかどうかが、重要になってくる。『ベンダー』が言うがままになる危険性もある」と指摘します。

また「憲法が保障する地方自治の保障は、一種の政治的な仕組みとして、国と相並ぶ権能を持ち、一定の領域に根差した団体の存在を前提とし、地方自治体が国から独立して判断した内容は、国も一定の範囲では手は出せない。公共的事務の内実は、住民が決めていくもので、それが住民自治である。地方自治の保障とは、侵してはならないという意味で『自治権』として捉えなければならない」と強調します。

講座では、「デジタル化」の問題点に加え、メリットについても話しがありました。また、「デジタル化」と対になるとも言える、住民の自己情報のコントロール権、個人情報保護制度をいっそう手厚くする必要性が高まっていることを実感し、一つの方法として、地方自治体での上乗せ条例の活用の重要性を学びました。「デジタル化」の状況を注視しつつ、政府主導で進展してきているこの課題について、市民のみなさんとの意見交換が必要だと実感しました。