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自治体学校参加レポート(4) 「自治体財政のしくみと課題」を受講して(市議会議員 鈴木智)

自治体財政の基本的な仕組みを学び、国と地方の財政関係や「地方創生」政策、新型コロナ対策による地方財政への影響など、今日の課題について考察を深める内容です。講師は川瀬憲子・静岡大学教授。
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 冒頭、講義の前提として、少子化や人口減少、グローバル化、格差と貧困の拡大、改憲論議と民主主義をめぐる議論、「自治体戦略2040構想」等の国の方針を概括。地方財政と国の政策の関係を解説しました。

 最初のテーマ、地方財政のしくみでは、「分権改革」から「地方創生」政策に至る流れと、財源の中央集中がすすんできた経緯を解説。さらに政府予算の特徴(?予算規模の拡大?防衛関係費の増加?社会保障関係費の伸びの抑制?地方財政計画の見直し)と、社会資本整備分野の見直し(インフラ長寿命化計画、PPP/PFI事業の推進、スマートシティの推進)、地方財政分野の見直し(自治体DX、水道等の広域化、自治体間の広域連携)を解説。歳出抑制等求める地方財政計画の方針と、「これ以上地方公務員の数を減らすことは限界」との地方財政審議会の見解を紹介しました。

次のテーマは地方交付税。仕組みと機能(財政調整、財源保障、財政誘導)を説明し、ナショナルミニマム保障としての機能を強調。 一方、民間委託等の業務改革を実施している自治体の経費水準を地方交付税の基準財政需要額に反映する「トップランナー方式」の影響等、機能の変質に言及しました。

 第3のテーマは「地方創生」。国の示す人工ビジョンに基づき、メニューに従い地方の政策を策定し、政府が査定・評価する仕組みを解説し、本格的な人口減少社会の到来、巨大災害への危機意識、経済のグローバル化を背景に、「スーパーメガリージョン等の集約型国土再編が狙われていると指摘。リニア新幹線開発の問題にかかわって解説しました。

 第4のテーマは、自治体財政や市民生活への影響について、2003年に清水市と合併し2005年に政令市となった静岡市の事例を紹介。
 最後に、?財政誘導装置としての交付税や補助金等を使い集約型国土再編への流れが作られてきた?それは中央集権型統治機構への再編といえる?交付税では成果主義と行政サービスの市場化がすすみ、財源保障機能が低下した等の問題点とともに、?「立地適正化計画」やアセットマネジメントで「地方創生」政策が市民生活に負の影響を及ぼす可能性、?都市機能と住居機能の集約が、一方で災害リスクを高める事例など懸念を紹介。?「地方自治体に地方財政権と住民主権の確立を」と課題を示しました。
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 講座を通して、国の枠組みに従って計画を立て、実施・検証する事業が増えている中、改めて、住民本位の地方自治体の目線で、各事業を検討していくことの重要性を学びました。