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地域にくらすクルド人と日本の入管制度ー映画「東京クルド」を見て(市議会議員 鈴木智)

「仮放免」という制度をご存じでしょうか。

 日本の入国管理制度では、在留資格を失った外国人に対し、原則、施設に収容する「全件収容主義」が取られています。収容の際の過酷な対応は、収容中に死去したスリランカ人女性、ウィシュマ・サンダマリさんの事件で報じられました。一方、多くの場合、一時的に収容を停止し身柄の拘束を仮に解く「仮放免」の措置が取られます。その場合、
就労は禁止。住民票もなく、生活保護も受けられず、生活が極めて困難です。

 また、日本の難民受け入れは、欧米諸国と比べあまりに少なく、難民として認められない多くの人たちがいます。蕨市、川口市周辺に約2千人が暮らしているクルドの人たちもほとんどが難民申請をしていますが、20年以上にわたり難民として認められた例はないとのことです(「在日クルドとともに」世界難民の日写真展案内チラシより)。

 映画「東京クルド」は、仮放免中の二人のクルド人青年が悩み、夢を追う日常を描いたドキュメンタリー。6月18日の上映会で主催者は「6月20日、世界難民の日。ぜひ知ってほしいという思いでこの上映会を企画した」と語りました。今回の上映会の主催はクルド人支援などの活動している「在日クルド人とともに」の皆さんです。

 映画では、小学生の時に迫害を避けトルコから日本に家族と来た二人のクルド人青年が、日本で学び、働き、生きていく夢や、努力し続ける姿を生き生きと伝えています。同時に、仮放免とされる入管・難民制度の困難を前に「こんな中でなぜ学ぶのか、と手が止まることもある」「帰れば危ないし、帰らなくても辛いし、仕事もするなと言われるし…」などの思いや苦悩が描き出されていました。

 上映後はトーク。絶望しているクルド人にショックを受け撮影を開始したという監督は、「誰が、いつ、なぜ捕まるかわからない」と裁量で運用されている収容の問題点を指摘しました。会場からは、ウクライナ避難民受け入れの受け止めや、外国人を受け入れない日本社会の問題などの質問も。 最後に、監督は「まずは映画を見て知ってほしい。行動する、しないはそのあと」と呼びかけました。

 この地域で暮らすクルドの人たちの現状、そして日本の入管制度・難民政策の深刻な問題について、地域の人たちと考えることの大切さを痛感しました。