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性犯罪をなくす取り組みを 問題の背景と課題について(市議会議員 宮下奈美)

9月定例会において議員提出議案として「犯罪被害者支援の充実を求める意見書」が全会一致で採択されました(民主わらび10月9日号)。今回は、「性犯罪・性暴力被害者のためのプライバシーに配慮した病院拠点型ワンストップ支援センターを都道府県に最低1カ所は設立し、人的・財政的支援を行うこと。関連法の整備や性犯罪被害者支援施策の強化を早急に行うこと」について、その問題の背景と課題について紹介します。

「#MeToo」や「#WithYou」等、セクシュアル・ハラスメントや性暴力への抗議が広がり、レイプ事件無罪判決に異議を申し立てた「フラワーデモ」は、2019年4月東京から始まり、その後47都道府県に広がりました。女性たちは「今まで話せなかった」「被害を次の世代に続かせてはならない」と次々と発言に立ち、報道でも取り上げられました。

 大学においても「ストップ!キャンパス性暴力」をかかげ、学内・就活での性暴力防止と「性的同意」を学び合う学生たちの運動が進み「フェミサイド(女性を標的にした殺人)のない日本を」、「本気で痴漢対策を」と求める、大学生、高校生らの署名も取り組まれています。

 私自身もセクハラや痴漢などはじめとした性暴力の被害を経験した女性の声を、会社勤めをしていた20数年前から聞いており、泣いて傷ついても表に出せない「声なき声」を実感し、ライフワークとして取り組んでいる問題です。

 自分の意思とは関係ないところで性の対象として見られてしまい、その末に被害に遭ってしまう多くは女性です(被害者の中には男性もいます)。暴行を受けた際、スピード感を持って対応を迫られるのが、望まない妊娠を防ぐことです。事件発生から72時間以内の措置で妊娠率を大幅に抑えることが可能で、病院・医師との連携が必須です。

 まず、被害者本人が自ら相談に行くのはハードルが高く、様子がおかしいと思った家族が聞き出して発覚する例や、また警察経由の場合もあります。いずれにしても犯罪被害者援助(相談)センター・警察・病院(産婦人科医会)がワンストップ型で被害者を援助することが重要となり、その場所が病院内にあることが求められています。
刑法の性犯罪規定について

 被害者の実態と国際水準に見合った改正を進めることが焦点となります。2017年の刑法改正では、▽強制性交等罪を非親告罪化し、強制性交等罪の被害者を女性以外に拡大する▽監護者性交等罪などの新設▽強制性交等罪の法定刑の下限を3年から5年に引き上げるなどの抜本改正が行われました。一方、関係団体等からの改正要求にもかかわらず、▽強制性交等罪などの「暴行・脅迫要件」の撤廃▽いわゆる性交同意年齢(13歳)▽強制性交等罪の公訴時効の撤廃又は停止▽配偶者間における強姦の処罰化▽刑法における性犯罪に関する条文の位置――などは、110年前の制定時のまま留め置かれました。これらの積み残しの課題は、性犯罪処罰規定が国際水準に到達するために改正が必要な事項です。

性交同意年齢の重要性
 アメリカは16〜18歳、イギリスやカナダ韓国、台湾は16歳、フランス、スウェーデンは15歳、などに対し日本はいまだに13歳で国連の女性差別撤廃委員会からも「性交同意年齢が13歳のままであることを懸念する」などの勧告を受けています。

 蕨市議会ではじめて性犯罪被害者への支援を2017年9月の一般質問で取り上げました。その後も繰り返し、このテーマについての課題や要望をしてきました。2018年には市役所の市民活動推進室に「犯罪被害者支援総合的対応窓口」が設置されるなど、具体化や改善がはかられています。 他にも関連するNPO団体等からも問題提起されているのが「義務教育で性行為を教えないという矛盾」です。2021年から、子どもたちが性犯罪や性暴力の当事者にならないよう、全国の学校において「生命(いのち)の安全教育」が試験的にスタートしていますが、その中でも性交や同意の重要性などについて具体的にふれられてはいません。今後の重要な課題です。

 日本共産党市議団は、引き続き性犯罪被害の防止と被害者への支援や援助等の取り組みを求めていきます。