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個性を活かして選ばれるまちづくりをテーマに
全国都市問題会議報告 その2(市議会議員 鈴木智・やまわき紀子)

長崎女子高校による龍踊
長崎女子高校による龍踊
全国からおよそ2千人の自治体関係者と学者、研究者などが集まり、都市問題や行政課題について話し合う「全国都市問題会議」が10月13〜14日に長崎市の出島メッセで開催されました。
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 1日目、午前の基調講演と主報告(先週号その1で既報)に続き、午後は島根県立大学地域政策学部の田中輝美准教授、山形市の佐藤孝弘市長、(一社)地域力創造デザインセンターの高尾忠志代表理事がそれぞれ一般報告を行いました。

新たな魅力と「関係人口」

田中氏は、人が何度も訪れている取り組みとして鳥取市用瀬町の「体験と宿泊・もちがせ週末住人の家」などを例示。都会に住む、故郷を持たない若い世代が、その土地を定期的に訪れ、「つながり」に魅力を感じ、地域交流やまちづくり、地域課題の解決に住人と一緒に取り組んでいる様子を詳しく報告しました。さらに「地方同士が人口を奪い合ってもしょうがない」「人口をシェアしよう」との言葉を紹介し、「観光以上、定住未満」の「関係人口」の重要性を強調しました。

「ビジョン」を活かす

 佐藤市長は、山形市で「健康医療先進都市」「文化創造都市」の2大ビジョンを掲げ、まちづくりをすすめている取り組みを報告しました。ビジョンによる個別施策も紹介し、「市民や企業などもその方向性に合致する取り組みを行うことで、まちの個性はより濃くなる」と発言。「まちづくりの共通言語」としてのビジョンの重要性を強調しました。

景観まちづくりの取り組み

 高尾氏は、長崎市景観専門監の職も務めます。これは、田上市長のまちづくり戦略「交流の産業化」による観光事業の展開を支え、「公共のデザインの指導と管理」「市職員の育成」を主な職務とするものです。報告では、基本的な考えとして「一人一人、一つ一つの取り組みの積み重ねをコーディネートし、市民の生活の質を向上させ、シビックプライド(まちへの愛着、誇り)につなぐ」こと、それが長崎らしい個性「訪れてよかったと思ってもらえる体験創出に貢献する」ことなどが語られました。
 さらに高尾氏は、必ず職員と現場での協議を行うこと、決められた納期と予算を守ること、との方針を紹介し、「平和公園爆心地ゾーンエントランス改修」「鍋冠山公園展望台リニューアル」「稲佐山電波塔ライトアップ」などの事業を解説。その中で、縦割りの弊害に陥らずユーザー目線で事業をすすめること、経験を通して職員が成長し自発的なアイディアや行動につながっていくこと、市民の「まちへの愛着」にも大きな影響があったことなどを生き生きと語りました。

 最後に、人口減少などの厳しさが増す中で、生活基盤や生産基盤に加え、環境的資本(景観など)、社会的資本(ネットワーク)、人的資本(人の能力)といった点が重要になると強調。景観専門監の立場を、「職員に伴走する家庭教師」と表現し、自治体職員に「やりがいのある仕事を」と述べ、報告をまとめました。

長崎の「おもてなし」

この日の最後は、開催市長崎の「おもてなし」企画、長崎女子高校龍踊部の公演。「女子には無理」などと言われながらも、努力を重ね磨かれてきた迫力ある伝統の技に、会場から大きな拍手が送られました。